「新鮮」「飲み頃」そして、コンディショニング 〜②コーヒー豆を熟成させる〜

えー、、、
長くて申し訳ないので要点だけ先に言うと
「加圧保存で豆を美味しくする試みを始めています」ということを今回は書きます(笑)

以前の投稿で、コーヒー豆は焙煎直後より1週間から2週間ほど経つ方が香味が増すと思う、というお話をしました↓
http://hopfrogcafe.biz/2017/11/20/conditioning/

国内のコーヒー店では「豆は焙煎直後が一番良い」「焙煎後2週間までが良い」「すぐに飲まない場合は冷凍保存が良い」というような案内が多いように見受けられます。
当店のように、「焙煎した豆は時間が経ってからが美味しくなる」「冷凍冷蔵は(出し入れの温度変化による結露で)フレイバーが失われるので避ける」「すぐに飲まない場合でも酸素に触れなければ高温多湿を避けた常温保管がベスト」という180度逆のご案内は、これまでコーヒーを丁寧にご自宅で飲んでこられた方には、少し奇異に思われることかもしれません。

この真逆に思える当店の考え方は、保存方法に拠って正解となり正解でなくなったりします。
どんな環境でどのように飲まれるか、で変わるところもありますが、
基本的に「酸化を防ぎ冷凍冷蔵しない」という豆の保存を当店では推奨しています。

それに加え、劣化を防ぐという消極的なものではなく「より美味しくする保存方法」という積極的な試みを始めています。
今回はその新しい試み、お客様の手に渡る前の店内での保存についてお話ししたいと思います。
(次回はご自宅での保存方法について書きます)

 

【経時変化を熟成の方向へ進める”加圧熟成”】

以前の投稿で

 “ざっくり言うと
 ●酸素にできるだけ触れさせない
 ●湿気を排除する
 これで、香味成分が放出されるのを防ぎながら、豆を「熟成」させていくことができます。”

と書いていますが、
当店では昨年末から、一部の豆を更に積極的に「酸化の可能性を排除」し「湿気を排除」、そして「二酸化炭素で加圧した」環境で熟成させることを試みています。

写真の黒い容器は、クラフトビール愛好家にはおなじみのグラウラー(量り売り容器)。4Lほどのサイズです。
この耐圧の容器に焙煎したての豆を入れて、二酸化炭素で加圧する保存を始めました。

ビール瓶に豆を詰めた商品も販売する当店。
通常、これらの道具はコーヒー豆そのものには全く縁遠いところにあるかと思います。
しかし、このビールを保存する容器達が案外コーヒーの保管に適しているのでは??

これまで感覚的に、抜気できる容器や瓶詰めでコーヒー豆が味わいを増して行くことを認識していました。
酸化を防ぐとともに、豆が自分で放出する二酸化炭素を外部に漏らさないことで、容器内の圧が高まり豆の香味成分の放出が起こらず、逆に豆内部にキープできているのではないか、との仮説を持ってそのような容器での保存をしていたのですが、最近調べている中で、これを裏付けるような記事に出会いました。
https://www.theatlantic.com/health/archive/2010/10/the-coffee-storage-conundrum-how-to-keep-beans-fresh/64118/
この記事では、コーヒー豆が酸化や吸湿で香味成分を失うことを防ぐために、バルブ付き紙パックの短期保存性の利点や、缶詰めされたコーヒーの長期保存性について書かれているのですが、加えて「加圧したコーヒー保存」の有効性を1930年代にイタリアのilly’sの創始者が提唱していることについての記述があります。

“This method puts newly roasted coffee in a rigid, sealed can with a special, one-way valve. As with vacuum packing, the air is drawn out. But a critical, extra step then occurs: the introduction of inert nitrogen gas, which pushes out any residual oxygen while increasing internal pressure, promoting proper aging from the start. As gas fills the can, the can’s internal pressure increases, effectively slowing down future degassing. “

”During the initial 10 to 15 days, a strong aging effect takes place, improving the quality of the coffee. The high internal pressure spreads the natural oils around the coffee cells (see photo), creating a barrier whereby the volatiles normally forced out by escaping carbon dioxide remain trapped inside. The net effect is shelf stability for months, enabling long-distance transport with no quality loss.”

焙煎した豆が出す二酸化炭素を閉じ込めること、窒素ガスで加圧することで、コーヒーの細胞壁にアロマ成分が広がりやすくなり、ガスを逃がさないことで香味成分の揮発を防ぎ豆の内部に閉じ込める、ということが写真付きで説明されています。
大手企業が輸出のためにもう90年近く前に研究していたことが、感覚的で経験則だった当店の考えを立証してくれていました。

となると、ビール屋でありコーヒー屋である当店のメリットを活かすに限ります。
ビール用にガスは各種持ち合わせており、道具も揃ってます。
illy’sは窒素ガスを詰める、と言っていますが、当店では現在、二酸化炭素での加圧を行っています。
二酸化炭素は空気より重たいので容器内下部に沈殿します。
容器上部に空間があっても豆が触れているガスは二酸化炭素なので、たとえ残留酸素があっても酸化しないという前提で、二酸化炭素を使用しています。

よく「コーヒー豆は生鮮食料品である」と言われていますが、その事実はそのままに、そこに「チーズ」「ワイン」のような熟成の概念を取り入れることで、より積極的にコーヒーの美味しさを愉しめるのでは?

これは、「劣化を防ぐ」=「飲み頃が続く」という考えを更に積極的に「美味しくさせていく」としていきたい試みです。

まだ始めたばかりで容器も少なく、現在のところエチオピアの豆のみ加圧熟成させていますが、今後をどうぞお楽しみに!

※これらの保存方法の違いは、コーヒーセミナーでも味比べしていただけます。セミナーもどうぞよろしくお願いします。
「HOP FROG CAFE のコーヒーセミナー」

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