「新鮮」「飲み頃」そして、コンディショニング 〜①コーヒー豆の飲み頃〜

食品や飲料の価値のひとつに
「新鮮」という”状態の評価”があります。

「新鮮な刺身」美味しいです。
「新鮮な野菜」美味しいです。

でも、
「一手間かけた魚」も美味しく、
「漬け物の野菜」も美味しいです。
(もちろん、ベースとして原料の鮮度が重要ですが)

そのものをどの時間軸と味わいの方向から捉えるのか、で、「新鮮」という言葉は価値を発揮したり、的外れになったりするように思います。

このタイトルの投稿では、コーヒーとビールにおける「飲み頃」の計り方を、鮮度や時間、そして「コンディショニング」という考え方を含めてお話してみたいと思います。

 

【コーヒーは焙煎直後が一番美味しい?!】

よく、「コーヒーは焙煎直後から味が落ちていく」と耳にします。
だから、「焙煎したての豆を買って」「できるだけ早く飲み切る」のが良い、と。

ところが、どうも私たちはしっくりこないのです。
コーヒー焙煎屋仲間とも話すのですが、
「焙煎直後より、数日経ったほうが味が良くまとまってくる」
と感じるのです。

焙煎直後に最大値を出し、その後は下降の一途をたどるのは、焙煎した豆が放出する「二酸化炭素」。
豆が出す二酸化炭素は焙煎直後がピークで、その後1週間2週間ほどで出なくなります。
蒸らしの時にコーヒー粉を膨らませるのはこの二酸化炭素で、膨らみが良ければ二酸化炭素をたくさん含んでいるということになり「放出で二酸化炭素を失った」豆は膨らまないということになります。

二酸化炭素はガス。
焙煎した豆から出る時に、香味成分も一緒に放出してしまいます。
それが味の劣化を進めるひとつの要因となります。

でも、だからといって焙煎したてが一番良い、というわけではなく、
酸や甘み、フローラルな香りや柑橘系の香りなど、焙煎によって引き出された香味成分は、焙煎直後はそれぞれが単独峰のように出ていたのに、数日経つと主張しすぎず仲良くなってきたり、より持ち味が深く出てきたりする傾向があります。
特に当店のような浅煎りの豆では、果実時代の持ち味が感じられやすいのですが、それもあってかと思う劇的な変化を見せる豆もあります。
驚く程表情を変えた豆では、直後はダージリンのような香りや栗のような甘みを感じていたのに、翌日はキリリとした柑橘系の酸味が際立つようになり、かと思ったら3日目にはまるでマスカットのような香りに変わったり。。。
焙煎した豆は、自分で二酸化炭素を出す間、味の変化を日々見せるようになります。

特に、しばらく置いたほうが美味しいと思うのが、エチオピアのナチュラル(※精製方法のひとつ)。
2週間くらい経ってからのほうが、独特な”ベリー”と表される香りが出てきます。「熟成」と言っても良い味の方向です。

しかしながら、この「熟成」の方向に豆を持っていくには、保存方法が重要になってきます。
当店の考えるシーン別最良の保存方法はまた別の投稿でお話ししたいと思いますが、

ざっくり言うと
●酸素にできるだけ触れさせない
●湿気を排除する
これで、香味成分が放出されるのを防ぎながら、豆を「熟成」させていくことができます。

わかりやすい例だと、当店が販売している瓶詰めコーヒー豆。
これは、焙煎直後に瓶詰めするため、密閉された空間で豆自身が出す二酸化炭素が豆自身を覆い、酸化を防ぐことになります。
実際、5か月経っても味の劣化は感じられず粉もふっくら膨らみます。

逆に、焙煎した豆を空気に触れる状態で置いておいたり、結露など湿気を帯びるような状態にしてしまうと、香味成分は抜ける一方で確実に劣化が早くなります。

「焙煎したての豆を」
「適切な保存方法で」
「程よく時間を置いて」
そして
挽いてしまうと空気に触れる面が一気に増えて放出が増えてしまうので、できたら
「一杯ごとに豆から挽いて」
飲むことは、そのコーヒー豆のポテンシャルを最大限に愉しむ事ができる秘策です。

 

当店では基本、豆の販売は焙煎してから日にちの経っていない豆でお出ししていますが、
「1週間2週間後の経時変化をできたら愉しんでください」
とつい言ってお渡ししてしまいます。
なぜなら、その先の変化を日々目の当たりにしてしまっているからです^^

「新鮮」だけではない「適切なコンディショニング」による「飲み頃」を、多くの方に愉しんでいただけたら嬉しいです。

 

続きは別の投稿で。

 

 

 

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